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扇田椅子張り店

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2013年 04月 14日

小さな木製回転椅子

大館にも遅い春がやっとこさやってきた今日この頃。
今日は春一番(二番?)が吹き荒れてます。
県南の勢至公園では桜が咲き始めたと新聞に載ってましたが、
大館はもうちょっとかかりそうです。

今日は、最近仙台から盛岡に引っ越して、大館とだいぶ近くなった友人から注文してもらった
小ぶりさがとてもかわいい木製回転椅子の張り替えのご紹介です。

古道具屋でとても安く買ったとのこと。
前回の革張りの回転椅子よりもふたまわりほど小さくて、座のみの張り替えでした。
(実は革張りの方を注文してくれたのが旦那さんで、今回は奥さんが発注してくれました。いつもありがとう!)

それではまずは張り替え前の写真から。
紺色のモケットで張ってありました。
木部の塗装はところどころ剥げ、布も切れてしまっています。
小さな木製回転椅子_d0254759_12201078.jpg

小さな木製回転椅子_d0254759_12202830.jpg

小さな木製回転椅子_d0254759_12204776.jpg


下から見ると、裏張りも切れて中が見えてしまっています。
鉄の部分も錆びてるな〜。
小さな木製回転椅子_d0254759_12262591.jpg


脚をはずしました。
小さな木製回転椅子_d0254759_12272440.jpg


裏張りをはがします。
へえー、思ったほど傷んでない。
小さな木製回転椅子_d0254759_12294415.jpg


さて、ひっくり返してモケットをはがすと黒綿(くろわた)が現れました。
黒綿は昔よく椅子張りのクッション材として使われていた素材です。
この下には藁(わら)が入っています。
小さな木製回転椅子_d0254759_12452232.jpg


そして、黒綿と藁をどけるとバネが出てきました。
バネは、バネを繋いでいる紐が切れてしまっていて、あっちこっちを向いています。
力布(木部にとめてバネや詰め物を受け止め、人が座った時に一番下で体重を支えるとても丈夫な麻布のこと)は切れていなかったので、かろうじて座面の形が保たれていたようです。
小さな木製回転椅子_d0254759_12542923.jpg


力布は切れていませんでしたが、新しいものと交換しますので取り外しました。
さあ、これからまた元のように座を作り直していきます。
小さな木製回転椅子_d0254759_130672.jpg


と、その前に、剥がれてしまっている塗装をし直します。
せっかく無垢のいい材料を使っているので、家具用の天然オイルで仕上げることにしました。
まず、サンドペーパーで塗膜を全部きれいにとります。
小さな木製回転椅子_d0254759_1393255.jpg


きれいになったらオイルを二度塗りします。
すべすべしっとりで気持ちいい〜。
木も呼吸が楽になって嬉しそうな気がします。
小さな木製回転椅子_d0254759_13122621.jpg


脚もおなじようにして塗り直します。
鉄の部分も出来るだけ錆をきれいにとりました。
小さな木製回転椅子_d0254759_13144756.jpg

小さな木製回転椅子_d0254759_13153111.jpg


さて、ここからが本番です。
まずは土手(クッション材が外側にはみ出ないように、また、座面のキワをきれいに形作るため、藁を使って作った部分のこと)を直します。
ゆるんでいる所に釘を打って土手が固くなるようにしたり、ヘッシャッン(藁をまいている麻布)が切れていたら新しく巻き直したりします。
小さな木製回転椅子_d0254759_1328537.jpg


次に、力布を張ります。
一カ所に力がかからないように網代に編みます。
小さな木製回転椅子_d0254759_13305651.jpg


力布の上にバネを置き、バネ糸(実際は紐ですが、椅子張り屋さんの間ではバネ糸といいます)で繋いでいきます。
この時、人間が膝を曲げてジャンプする準備をするように、バネも少し押さえつけてとめて、いつでも人の体重を支えられるようにしておくのがコツです。
小さな木製回転椅子_d0254759_13481021.jpg


裏から見たところ。
セル糸というロウ引きした丈夫な糸でバネを力布にとめます。
小さな木製回転椅子_d0254759_14575918.jpg


バネの上にヘッシャンをかぶせてからその上に詰め物をのせ、中に芝草を詰めて形を整えながら
白金布(しろかなきん)を張っていきます。
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白綿をのせます。
小さな木製回転椅子_d0254759_154124.jpg


普通はここで上張り布を張りますが、今回は背柱の付近の切りこみが難しかったので、もう一度白金布を張って練習(笑)。こうして上張りで失敗しないようにしっかり確認します。
小さな木製回転椅子_d0254759_15104497.jpg


下張りでしっかり確認したおかげで、切りこみも上手くいき、上々な仕上がりになりました。
小さな木製回転椅子_d0254759_15184849.jpg

小さな木製回転椅子_d0254759_15191062.jpg

小さな木製回転椅子_d0254759_15193467.jpg


あとはタッカーの針隠しにチロルテープを布用接着剤で貼っていきます。
今回使ったテープは、注文してくれた友人が手芸屋さんで買って送ってくれたものです。
緑のモケットとの色合いもバッチリ!
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小さな木製回転椅子_d0254759_1525367.jpg


最後に脚を取り付けて…、うちの縁側でパチリ!
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小さな木製回転椅子_d0254759_15273334.jpg


今回もがんばった甲斐があってとても良い仕上がりになったな〜と自画自賛(笑)。
やっぱり古いものは良い素材が使われていることが多くて、修理することでよみがえるどころか、新品には絶対出せない味わい深さが出ますね。
いや〜、こういう仕事ができて幸せです。

破れちゃったりしたらまたいつでも直すからね!
末永く使ってあげてください。
扇田椅子張り店も、末永くよろしくお願いします!(笑)

# by oogidaisuhariten | 2013-04-14 16:10